野菜や果物など、植物性食品を中心とした食生活を送る「ベジタリアン」

海外を中心に数が増加し、日本でもその食生活に注目が集まっています。

しかし、ベジタリアンは食事内容が偏りやすく、私たちの身体に必要な栄養素が不足しやすいともいわれています。

それではなぜ、ベジタリアンの食事を行う必要があるのでしょうか?

また、ベジタリアンの食事によって不足しやすい栄養素にはどのようなものがあるのでしょうか?

今回は、

  • ベジタリアンの定義とメリット
  • ベジタリアンの食事で不足しやすい栄養素とその働き
  • ベジタリアンでも栄養不足に陥らないためのポイント

以上の3点を中心に、管理栄養士がご紹介します。

「ベジタリアン」の定義とは?

「菜食主義」の食事をするベジタリアン

「ベジタリアン」とは、肉や魚といった動物性の食品を食べることを避け、植物性食品を中心とした食事をする「菜食主義」のことを指します。

生き物の命を大切にするという思想に基づいており、自身の健康維持を目的とする思想のほか、動物保護や環境保護を目的にベジタリアンの食生活を行っている人もいます。

ラテン語の「vegetus」が語源とされ、「健全な、新鮮な、元気のある」といった意味があります。

ベジタリアンは日本ではあまり多くはありませんが、アメリカなど海外では広く受け入れられており、ベジタリアン向けの食品や料理がスーパーや飲食店・病院食・学校給食などにも取り入れられているようです。

似て非なる「ヴィーガン」との違い

菜食主義のベジタリアンの中にも、その制限の度合いによって様々なタイプがあります。

乳製品や卵は食べるベジタリアンもいれば、乳製品は食べるけれど卵は食べない、反対に卵は食べるけれど乳製品は食べないといったベジタリアンもいます。

そんな中でも、乳製品も卵も食べない「ヴィーガン」「完全菜食主義」と呼ばれ、完全に植物性食品しか食べません。

ひとことにベジタリアンといっても、思想の違いによって食事の仕方にも大きな違いがあるのです。

ベジタリアンのメリットとは?ダイエット、健康、美容効果が期待できる!

ベジタリアンのメリットとしては、動物性食品に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取を抑えられることで血中脂質の上昇を防止できる点が挙げられます。

血中脂質が上昇すると余分な脂質が体中の脂肪細胞に蓄えられ、皮下脂肪や内臓脂肪の増加に繋がります。

体脂肪の増加は肥満や動脈硬化、生活習慣病の原因にもなります。

また、ベジタリアンは自然と食物繊維の多い食事内容になるため、腸内環境が整い便秘の予防・解消にも繋がります。

老廃物がスムーズに排出されることで肌トラブルの予防にもなり、美容への嬉しい効果も期待できます。

さらに、食物繊維は一緒に摂取した糖質や脂質の吸収を穏やかにしてくれるため、生活習慣病を予防する効果も期待できます。

つまり、ベジタリアンの食生活は肥満防止や生活習慣病の予防のほか、美容にも役立つのです。

ベジタリアンは栄養が不足しやすい!気をつけるべき栄養素とは?

ベジタリアンの食生活にもメリットがあることがわかりました。しかし、ベジタリアンには不足しやすい栄養素もあるのです。

ここからは、ベジタリアンに不足しがちな栄養素とその働きについてご紹介します。

ベジタリアンが不足しやすい栄養素①タンパク質

ベジタリアンに不足しやすい栄養素のひとつが、タンパク質です。

タンパク質は主に肉や魚・卵・乳製品に多く含まれており、それらを食べないベジタリアンやヴィーガンの食事では不足しがちです。

タンパク質は三大栄養素のひとつで、私たちが生きていくためのエネルギーをつくり出したり筋肉や内臓・皮膚・髪の毛など身体をつくるための材料となったりと、なくてはならない栄養素です。

特に、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類の必須アミノ酸は体内で合成することができません。

そのため、食事から摂取することが大切です。

ベジタリアンが不足しやすい栄養素②脂質

脂質もタンパク質と同じく三大栄養素のひとつです。

1gあたり9kcalと非常に効率の良いエネルギー源であり、私たちが生きるためのエネルギーを産生してくれます。

また、脂質はホルモンの原料となるほか、細胞を構成する要素となりハリのある肌の維持にも役立ちます。

特に脂質の中でも注意が必要なのが、体内で合成することができない必須脂肪酸です。

n-3系脂肪酸であるDHAやEPAがそれにあたります。

サバやアジなどの青魚に豊富に含まれている脂肪酸ですが、ベジタリアンは魚を食べられないため植物性食品から摂取する必要があります。

ベジタリアンが不足しやすい栄養素③鉄

鉄は血液中の赤血球をつくる材料となるミネラルで、特に月経により多量の血液を消費する女性にとっては大切な栄養素のひとつです。

鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄という2種類の形があり、肉や魚などの動物性食品に多く含まれるヘム鉄のほうが、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄よりも吸収率が高いことがわかっています。

そのため、ベジタリアンの場合はより多くの鉄の摂取を心がけるとともに、効率よく鉄を吸収できる工夫が必要です。

ベジタリアンが不足しやすい栄養素④亜鉛

亜鉛は体内で働くあらゆる酵素の構成要素であり、代謝の維持やタンパク質合成・身体の細胞の成長などに必要なミネラルです。

味覚の維持や健康な肌の維持にも役立っており、不足すると味覚障害や皮膚炎などを引き起こす可能性もあります。

一般的には、牡蠣や牛肉などの動物性食品に比較的多く含まれている栄養素です。

ベジタリアンが不足しやすい栄養素⑤カルシウム

カルシウムは骨や歯を構成する主成分で、ミネラルの中では私たちの体内に最も多く存在しています。

厚生労働省が実施する国民健康・栄養調査によって日本人はカルシウムの摂取量が少ないことがわかっており、ベジタリアンはなおさら不足に注意が必要です。

ベジタリアンが不足しやすい栄養素⑥ビタミンB12

ビタミンB12は私たちの体内でアミノ酸代謝や脂質代謝の補酵素として働いているほか、赤血球の生成にも必要な栄養素で、鉄とともに貧血の予防・改善には欠かせません。

微生物以外では合成することができないといわれており、植物性食品にはほとんど含まれていないためベジタリアンの場合は不足しやすいのです。

卵や乳製品には含まれていますが、それらも食べないヴィーガンはなおさら注意が必要です。

ベジタリアンでも栄養不足に陥らないためのポイント

ベジタリアンの食事はメリットがある一方、不足しやすい栄養素があることもわかりました。

とはいえ、摂取できる食品に制限がある中でも食品の選び方や食べ方の工夫次第で、栄養素の不足を防ぐことができます。

そのためのポイントを、具体的にご紹介します。

植物性食品を中心に制限の中でも栄養豊富な食材を選ぶ

不足しがちな栄養素をご紹介しましたが、ベジタリアンでも食べられる植物性食品の中にもそれらを豊富に含むものがあります。

それの一例が、以下の食品になります。

  • タンパク質
    大豆・大豆製品、えんどう豆、レンズ豆、麻の実、かぼちゃの種、落花生、アーモンド、カシューナッツ、ゴマ
  • n-3系脂肪酸
    えごま油、アマニ油、くるみ、麻の実

  • ピュアココア、麻の実、小松菜、枝豆、サラダ菜、ほうれん草、海藻類、のり
  • 亜鉛
    かぼちゃの種、松の実、麻の実、ピュアココア、ゴマ、アーモンド
  • カルシウム
    大豆・大豆製品、ゴマ、海藻類、モロヘイヤ、パセリ、青シソ、水菜、小松菜、ほうれん草
  • ビタミンB12
    焼きのり、青のり

正しい栄養の知識を身につけ、制限の中でもバランスよく食品を選びましょう。

栄養素の吸収率をアップさせる

不足しがちな栄養素を含む食材を積極的に摂ることに加え、それらの栄養素の吸収率をアップして効率よく摂取することも大切です。

特に、鉄やカルシウムは組み合わせる食材によって吸収率を簡単にアップさせることができます。

植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄は、単体では吸収率があまり高くありません。

しかし、鉄はビタミンCを一緒に摂ることで吸収率をアップさせることができます。

じゃがいもやパプリカ・ピーマンなどの野菜や、キウイフルーツやいちご・レモンなど、ビタミンC豊富な食材を組み合わせるのがおすすめです。

また、カルシウムはビタミンDと一緒に摂取することで吸収率がアップします。

そのため、ビタミンDが豊富なしめじやしいたけ・舞茸などのきのこ類を組み合わせると良いですね。

エネルギー不足に注意

ベジタリアンの食事を目指して野菜や果物ばかり食べていると、エネルギー不足に陥る可能性があります。

身体が生きるために必要なエネルギーが不足すると、代謝が下がり痩せにくい体質になってしまいます。

主なエネルギー源となる炭水化物や脂質を豊富に含む穀物やナッツ類など、植物性食品からもしっかりとエネルギーを補給しましょう。

妊娠・授乳中の女性は赤ちゃんへの影響にも配慮が必要

妊娠・授乳中の女性の場合、赤ちゃんへの影響にも配慮が必要です。

妊娠中はお母さんの血液を通じて、授乳中は母乳を通じて赤ちゃんに必要な栄養素を送っています。

そのためお母さんが栄養不足に陥ると、赤ちゃんにも必要な栄養素が行き渡らなくなってしまう可能性があるのです。

特に、DHAやEPAは赤ちゃんの脳や神経系の発達に必要不可欠です。

妊娠・授乳中の方がベジタリアンの食事をするときには、かかりつけの医師にご相談いただいたうえでご自分と赤ちゃんの健康に配慮して安全に行ってください。

まとめ:ベジタリアンでも食品の選び方と食べ方次第で栄養不足は防ぐことができる!

ベジタリアンの食事について、メリットがある一方で陥りやすい栄養不足についてご紹介しました。

ベジタリアンにもその制限の度合いによって様々な種類がありますが、動物性食品を全く食べないヴィーガンなど、制限の厳しい場合ほど栄養不足に注意が必要です。

植物性食品の中にもベジタリアンに不足しがちな栄養素を豊富に含むものがありますから、食品の選び方や食べ方を工夫して、栄養バランスが整った食事をしてください。

今回ご紹介したポイントを押さえて、ベジタリアンでも健康的な毎日を過ごしましょう!

<参考>
・ベジタリアン研究所(アクセス:2020.5.13)http://openmicroblogger.com/kisotisiki/
・「健康食品」の安全性・有用性情報(アクセス:2020.5.13)
https://hfnet.nibiohn.go.jp/
・食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl